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2018.09.29 Saturday

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    2018.06.25 Monday

    反竜伝記 Anotherstory ACT11 つかの間のグランバニア

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       …前回より一年以上間が空いたことを深くお詫び致します。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       ところは変わって、グランバニア城。

       すでに日は沈みかけ、あかね空は暗く染まりかけている。

       そんな黄昏時の風景をどこか憂鬱げに見つめているのは、この国でもっとも偉い人物、すなわち、王だった。

      ……でありますからして。民からの嘆願書に目を通して頂くべく……

       玉座に座る主に頭を垂れて報告書を述べている大臣オジロンは、彼が心ここにあらずでることに気づき、うぉっほんと咳き込む。

      「あ、あぁ、すまない。嘆願書であったな。して、何の用件であったか」

      (やれやれ)

       オジロンは肩をすくめた。

       王子であるロムが旅立って以来、ずっとこの調子だ。

      「陛下。ロム様のことなら心配はありません。力を失ったとはいえ、あの方は勇者なのですから。それに、頼もしいお仲間達もついておいでではありませんか」

      「うむ。わかってはおるのだが……

      (まさか、陛下がここまで子煩悩だったとは。無理もない。事情があったとはいえ、ずっと離ればなれだったのだからな)

       オジロンも娘を持つ身である。父親として、主の気持ちは痛いほどよくわかった。

      「陛下のお気持ちはわかりますが、ご政務の方をおろそかにしてはなりませぬぞ。この後の予定もまだ控えているのですからな」

      「わかっている……

       そう返事を返した後、

      ……やれやれ、判の押しすぎで、腕が腱鞘炎になりそうだ」

       と、心の中で独りごちる若き国王だった。

       

       

       

       

      「ふぅ、やっと終わった」

       空には夜のとばりが降りて、星が瞬き始めた頃。

       私室のテラスに出たリュカは大きく背伸びをした。やっと全ての政務から解放されたのだ。

      「お疲れ様です。あなた」

       そう言って、妻である王妃フローラが夫のマントを脱がす。

      「やれやれ。オジロン叔父が私に国王の座を返上しようとした気持ちだが、今になってみればよくわかるな。気ままに旅をしていた頃が懐かしいよ」

      「まぁ」

       くすくすと笑う。

       今の会話をもしオジロンが聞いていたら、ご子息のことが心配だったのではなかったのですか、と呆れたに違いない。

      「しかし、ロムのことが心配でないわけではないんだ。勇者ではなくなったとはいえ、あいつは無茶をするからなぁ」

      「えぇ……あら、噂をすれば」

      「ん?」

       何やら、空が光った気がして、リュカは顔を上げた。

       すると、まるで流星のように、それは目の前に落ちてきた。

       床に激突する……! そう危惧したが、それは無用な心配だった。ぶつかる寸前、それまでの落下速度が嘘のようにゆるやかになり、やがて彼は軽やかに着地した。

      「こいつは驚いた。帰宅にはまだ少し早いんじゃないか?」

      「父さん!」

       そう、突然リュカとフローラの前に姿を現したのは、キメラの翼の力で長距離跳躍してきた二人の息子、ロムだった。

      「というと、無事にグランバニアについたのか。良かったっ」

      「お前、どうして」

       そう言いかけて、リュカは真剣な表情になる。

       自分の息子が、用もなく冒険を放り投げて帰ってくるわけがない。ただならぬ事態が起こったのだと即座に察したのだ。

      「お前一人か。一体何があった?」

       

       

       

       ロムから聞かされた話は、驚くに値する内容だった。

       ようやく見つけた勇者は呪いにより重体……そして、メッキーの死。強力な敵の出現。さらにアイメルが人質として捕えられているというのだ。

      「そうか。メッキーが」

      「うん……

      「しかしロム。悲しんでいる場合ではないぞ。一刻も早く、アイメルを敵から救出する術を考えなければ。あまり時間は残されていないのだろう?」

      「そのことで母さんに相談があるんだ。この世界で、もっとも呪文に長けた魔法使いである母さんに」

       ロムはフローラに話した。マーリンと出会ったこと。彼が発見した古の呪文モシャスのこと。そして、その呪文は不完全だということを。

      「マーリンか。懐かしいな。だが……

      「えぇ……モシャス。確かに、その呪文は知っています」

       フローラの前世は、かつてデスピサロと戦った女勇者だ。そして、彼女は今も前世の記憶を受け継いではいるのだが。

      「当時の私なら扱えたのですが、残念ながら、今は……

      「どうしてさ。母さんの魔力は確かにあの頃よりは落ちたかもしれないけど、それでも、この世界の誰よりも高い魔力を持っているはず」

      「それは……

      「そのことについては、私が話そう」

       と、リュカ。

      「ロム。お前が旅立ってからわかったことなのだが、実はな。母さんのお腹の中には、お前の弟か妹がいるのだ」

      ……え?」

       ぽかん、とロムは口を空けた。

      「そう、なの?」

      ……えぇ」

       フローラはそういって、まだ目立たないお腹をさすった。

      「そ、それは、おめでたいことだけど……あ、そうかっ」

       ロムはやっと理解した。

       女性の魔法使いには、ある条件により、一時的にだが極端に魔力が落ちることがあるのだ。一つは生理の日、そしてもう一つは初期の妊娠中だった。一説によれば、自分の魔力を子供に受け継がせるためといわれているが、確かなことはまだわかっていない。

      「簡単な呪文を使うくらいなら問題ないけど、モシャスはとても魔力消費が激しい呪文なの。私の魔力が戻るには、あと二ヶ月はかかるわ」

      「う、うーん。おめでたいことだけど、同時に困ったな。今の僕では、モシャスなんて呪文、とてもじゃないけど扱えないし」

      「ふふ、ロム。誰か忘れてない?」

       フローラは笑って言った。

      「私以上に魔力の強い娘がいるじゃない。あなたの妹が」

      ……あっ! そうか、フィアがいた!」

       どうして今まで気づかなかったのだろう。

      「母さん。フィアは今どこに?」

      「ふふっ、私ならここよ。兄さん」

       いつの間に駆けつけたのか、入り口のドアにもたれかかった形で、フィアが笑顔を見せていた。

      「どうやら、私の力が必要な時が来たみたいね」

      「やれやれ、お早い登場だな」

      「兄さんの魔力の波動が近づいているのがわかったからね」

      「なるほど。母さんが太鼓判を押すわけだ」

       魔力の波動を感じることが出来るのは、一流の魔法使いの証だ。

      「実は……

       ロムはフィアに事の次第を話して聞かせた。

      「アイメルがピンチなのね。わかったわ。私、行くわ」

       迷うことなく、フィアは二つ返事で承諾する。

      「しかし、いいのか。お前は王位継承者としての責務が」

      「心配ないわ。それに、王位継承者が国を飛び出すのはこの国では珍しいことではないでしょう?」

       言いながら、ちらりと現国王を一瞥する。

      「やれやれ。言い返せないのが辛いところだ。オジロンからは、私からうまく言っておこう」

      「ありがとう。お父さん」

       そういって、フィアは父の頬にキスした。

      「し、しかし、今回の旅は前回以上に危険なんだぞ」

      「妹の心配をしている場合ではないでしょう? 今は」

      「うっ」

       そう言われると、さすがに言い返せない。

      「わかった。そうと決まればすぐに行こう。あまり時間は残っていないんだ」

       そういって、ロムは妹の手を取る。

      「ちょっと待って。マーリンのモシャスの呪文は、未完成なのでしょう? それなら、これを彼に渡してちょうだい」

       そういって、フローラは先ほど何かを書いた紙切れをフィアに手渡した。

      「これは?」

      「モシャスの呪法の一部を書き写したものよ。きっと、この部分が足りてなかったから、不完全だったのだと思うわ」

      「さっすがお母さん! 確かに受け取ったわ!」

       フィアは手渡されたメモを大事に懐にしまった。

      「問題はどうやって帰るか、なんだよな」

       以前ならルーラの呪文を頼るところなのだが、現在ではあの呪文はおいそれとは使ってはいけないことになってしまっている。

       例外であるキメラの翼も、今し方使ってしまったばかりだ。

      「そのことについては問題ないわ」

       にっこりと、フローラは笑った。

      「え、でも、キメラの翼はもう使ってしまったし、ルーラの許可はとても厳しくて、いくら王族とはいえ、おいそれと許可は出ないって話だよ」

      「大丈夫よ。ルーラも、キメラの翼も使わないから」

      「でも」

      「いいから、ロムとフィアはそこのテラスに上がって。しっかりと手をつないでおくのよ」

      「あ、あぁ」

       言われるがままに、二人はテラスに出て、手を繋ぐ。

       フローラは二人から少し離れた距離に立つと、呪文を詠唱し始めた。

      「風の精霊よ。この者たちをはるか彼方の地へと飛ばしたまえ」

       するとどこからともなく風がフローラの周りにまとわり始めた。

       それは最初はそよ風程度だったが、やがてつむじ風とも言えるほどに強まっていく。

      「まさか、母さん。その呪文って」

      「ロム、フィア。頑張ってアイメルを助けるのですよ。私も、影ながら応援しているわ!」

       最後に激励の言葉を贈って、フローラは術式を解放した。

      「バシルーラッ!」

       まとわっていた風が、爆風のように弾ける。次の瞬間、ロムとフィアは巨人に投げ飛ばされたかのように大空に向かって吹き飛んだ。

       二人の悲鳴は、すぐに小さくなり、その姿は完全に闇夜に溶けていった。

      「やれやれ。慌ただしい奴め。しかし、今回の旅、予想していた以上のようだな」

       リュカは目を険しく細める。

      「いざとなったら、私も出るしかないかもしれん。もっとも、私の力など、微々たるものだが……

      ……あなた」

       フローラはぎゅっと、胸元に添えていた拳を握りしめて言った。

      ……っ」

      「なっ」

       リュカはそれを聞いて絶句した。

       それは確かにこの先絶望しか待ち受けていない人類にとって、大きな希望となるかもしれない。だが、少なくともこの夫妻にとっては最大の不幸以外の何物でもなかった。

       

       

       

       

       一方その頃。ルラフェンの街ではエリオスが苛つきながら、宿屋の前を右往左往していた。

      「まったく、ロムの奴はこんな夜遅くまでいったいどこへいったんだ。まさかあいつ、一人でキラーマジンガのところまで行ったのではないだろうな」

       そうだとすれば、大変だ。急いで自分も後を追おうか、と考えた時だった。

      「ん、何だ? 空から……

       突然、空から二つの影が降ってきたのだ。それはエリオスの目の前で派手に地面に激突した。

      「って、うおおぉっ!?」

       同時に砂埃が舞い上がり、視界が遮られる。

      「なななな、なんだ、いったい?!」

      「いたたたた。まったく、フィアが衝撃緩和の呪文を唱えてなかったら、死んでいたところだったぞ」

       そういって、ロムはパンパンと土煙を払った。

       そう。エリオスの前に突然現れた人影。その正体は親友ロムと、その妹フィアだった。

      「おい。一体全体どういうことだ? これは」

      「悪いエリオス。話は後だ。さぁ、フィア。こっちに来てくれ」

       わけを話す暇もなく、ロムはフィアの手を引くとものすごい早さで夜の闇に消えていった。

       残されたエリオスは不機嫌そうに頭を掻いたが、

      「まぁ、あいつのことだ。心配はいらん、か」

       そう呟いて、そそそと宿の中へと入っていった。

       

       

       二人がたどり着いた先は、言うまでもなく、マーリンの邸宅だった。

      「マーリン! つれてきたよ!」

       ロムがドアを勢いよく開けると、マーリンはイスに座ってお茶をすすっていたところだった。

      「ほぉ、懐かしいのう。フローラや。元気でやっていたかね?」

      「マ、マーリン?」

       久しぶりの再会にも関わらず、いきなり母親と間違われてフィアは目をぱちくりさせた。

      「ちょっと、どういうこと? 様子が変よ」

      「あぁ、ちょっとね。まぁ、お年だし」

       と、ロムはそっと耳打ちする。

      「本当に大丈夫なの?」

       いぶかしげな目つきでフィア。ロムは苦笑いを浮かべて、無言で肩をすくめるだけだった。

      「マーリン。彼女なら、きっとモシャスの呪文を使いこなすことができるよ」

      「うむ。フローラなら申し分ない。じゃが、呪文自体が未完成なことには変わらないし。困ったのう」

      「そのことなんだけど」

       おずおずと、フィアはマーリンに母から手渡されたメモを差し出した。

      「なんじゃ、これは」

       マーリンはそれを手に取って見る。

      「こ、これはっ!」

       くわっ、と目が大きく見開かれた。

      「こ、これだ。これこそ、今までわからなかった術法。そ、そうか。この術法をあの方式に当てはめて……

       マーリンはぶつぶつ呟きながら、机にしがみつくと、おもむろに紙にペンを走らせ始めた。

      「そ、そうか。なるほど。これはこれで、それはあれだったわけだな!?」

      「マ、マーリン?」

      「うるさいわい! 気が散るじゃろうが! 少し静かにしとれい!」

       一喝されてしまい、しゅんとロムは縮こまった。

       そのまま、どのくらいの時間が流れたのだろうか。

      「ふぅ、これで完成じゃ」

       ペンを置いて、マーリンは額の汗を拭った。

       その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

      「待たせたな。ロム、フィア。これが、頼まれていたモシャスの呪文の完成版じゃ」

      「マ、マーリン。今、僕たちのことを」

      「ほっほっほ。わしとしたことが、ちぃっとばかりボケちまっていたみたいじゃわい。じゃが、もう大丈夫じゃ。未知なる呪文の解明という知識欲が、わしの脳細胞を十二分に活性化してくれた。おかげで、先ほどまでもやもやしていたものがすっぱりと晴れて、気分爽快じゃわい」

      「……マーリン。まさか、わざとぼけたふりをしていたわけじゃないよね?」

      「ほっほっほ」

       マーリンは欠けた歯を浮かべて笑うだけだった。

       

       

       

       続く

      2018.09.29 Saturday

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