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    2017.02.15 Wednesday

    正竜伝記 第一章 トーラという名の少年 3

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       反竜伝記が思いの外難産なので、先にこちらをアップします(汗

       

       

       

       

       

       

       3


       出立は明日にして、今日のところはこの港の宿に泊まろう。
       そう言われた時、トーラは内心がっかりしていた。
       別に野宿は嫌いではない。むしろ、焚き火に当たりながら、冬の澄んだ星空を見ながら眠るのを、実は楽しみにしていたのだ。
       以外と旅人としての素質があったのかもしれない。
       魔物が襲ってきてもへっちゃらだ。こう見えても父から棒術を教わっており、スライムやおおきづち程度ならやっつける自信がある。
       それに……トーラはちらっと父とあのルドマンというおじさんの顔を盗み見た。
       ああいう強引な手前は、父パパスがもっとも苦手とする人種なのだ。
      「おとうさん、僕ならいいよ。野宿なら」
       慣れているし、と続けようとした時だった。
       突然、ばたっと誰かが倒れる音がして、彼の言葉は遮られた。
      「え?」
       目をぱちくりさせて、彼は見た。
       前のめりに倒れ込んだまま、動かなくなった黒髪の女の子を。
      「デ、デボラ!」
       ルドマンが慌てて倒れた一人の女の子に近寄る。
       倒れたのは、二人の少女の年上の方だった。
      「おねえちゃん!?」
       妹とおぼしき青い髪の少女が、パニックになっておどおどとしている。
      「ど、どうしたんじゃ、デボラ! デボラ!」
      「ルドマンさん、そんなに揺さぶってはなりません」
       慌てふためくルドマンを諭して、パパスがそっと少女の身体を抱きかかえた。
      「……む、いかん。熱がある」
       デボラという少女の額に手を当てて言う。
      「ルドマン殿、今朝はこの子はどのような様子でしたか?」
      「い、いえ、いつもと変わらなかったのですが……」
       心なしかルドマンの顔色も悪い。
      「とにかく、一刻も早くこの子をベッドのあるところへ」
      「わ、わかりました」
       言うが早いか、パパスとルドマン、そしてデボラの妹らしき少女は一直線に宿屋へと向かっていった。
       ことの成り行きを呆然と見守っていたトーラは、はっと我に返ると、
      「ま、まってよ! 僕も行くよ!」
       慌てて、父の背中を追いかけて走り出したのだった。


       宿屋の亭主に訳を話して、パパスは少女を客室のベッドに寝かせた。
       デボラの呼吸は荒い。
       額に汗を掻いているのに、顔色の方は真っ青だ。苦しそうに眉間に皺を寄せ、口元を歪ませている。
       ……これは、ただの風邪ではないかもしれないな。
       それは、長年の経験による直感だった。
      「パ、パパス殿、娘は、デボラは」
      「とても熱が高い。とにかく、亭主に桶にありったけの水と手拭いを持ってきて下さいと伝えてくれますか。できれば、氷も。この季節ならば、あるはずです」
      「わ、わかりました」
       ルドマンはそういうと、どたばたと慌ただしく部屋を飛び出した。
      「おとうさん、僕にできることがあるなら、なんでもいって」
      「ありがとう、トーラ。だけど、お前は隣の部屋にいっていなさい。たぶん風邪をこじらせたのだと思うけど、うつるとも限らないしね。えっと、そちらの君、なんていったかな……」
      「フローラ、です」
       おずおずと、少女は名乗る。
      「そうか、君もお姉さんが心配だろうけど、ここはわしに任せてくれないか」
      「……わかり、ました」
       納得していなさそうだったが、フローラはしぶしぶ頷いた。


       隣の部屋に来るなり、途端にフローラは大粒の涙を浮かべて泣き出したので、トーラはびっくりした。
      「だ、だいじょうぶだよ。ぼくのお父さんにまかせておけば。父さんはとても物知りなんだ。医者も顔負けなんだよ」
      「で、でも、もしおねえちゃんが死んじゃったりしたら、わたし、一人ぼっちになっちゃうよぅ」
      「そ、そんな、死んじゃうなんて、ありっこないよ」
       そういって元気づけそうとするが、フローラはいっこうに泣き止む気配を見せない。
       まいったなぁ、と、トーラは頭を抱えた。
       彼があと十年歳を重ねていれば、泣いている女の子にどう声をかけたらいいかぐらいはわかるかもしれないが、人生経験がたった六年の男の子には、それはあまりにも無理難題すぎた。
       そもそも、同世代の女の子と口を聞いたことすらないのだ。
       結局、トーラは女の子が泣き止むのを黙って待っているしかなかった。
       十分ほどして、ようやくフローラの様子は落ち着きを取り戻したかに見えた。まだ目は涙ぐんでいるが。
      「おねえちゃん、朝からあまり体調が良くなかったの。けど、お父様の前だから、迷惑をかけるわけにはいかないからって、我慢して」
      「……そう」
       なんだろう。この違和感は。
       トーラは二人とルドマンとの間に、何か見えない壁ようなものがあるのを感じていた。
       フローラは姉のデボラのことをおねえちゃんというのに、ルドマンのことは仰々しくお父様と呼んでいるし、どこか遠慮がちだ。
      「……わたしたちね、貰い子なの」
       トーラの疑問に答えるかのように、フローラはぽつりと声を漏らした。
      「一年前、わたしたちが五歳の頃に、ルドマンさんがやってきて、養子に迎えたいって行ってきたのよ」
      「それじゃあ君たちは」
      「うん、ずっと、孤児院にいたの」
      「そうだったんだ」
       トーラはぽつり、とつぶやいた。
       この子には父親も母親もなく、家族といえば、姉のデボラしかいなかったのだ。
       二人の間にどれほどの強い絆があるか、このフローラの落ち込みようを見ていればよくわかった。

       

       

       

       続く

      2018.09.29 Saturday

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