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    2017.02.14 Tuesday

    正竜伝記 第一章 トーラという名の少年 2

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      ついつい主人公の名前をリュカと間違えそうになってしまう……(苦笑)

       

       

       2


      「おぉ、どうやらついたようですな」
       いつの間に二人の後ろへやってきたのか、白髪に恰幅の良い男性が話しかけてきた。
       白い制服にキャプテンハット。火のついたパイプで口から紫煙を吐くその出で立ちは、まさに船長といった感じだ。
      「おぉ、船長殿。このたびはまことにかたじけない。急な頼み込みにも構わず、快く乗船を引き受けてくれたこと。感謝に堪えません」
       そういって、パパスは男の手を取って礼を述べた。
       この船は旅客船ではない。れっきとした貨物船であり、普段は客を乗せることはないのだが、そこをパパスが無理を言って乗せてもらったのだ。彼にはどうしても、サンタローズへ帰らなければならない理由があったのだが、あいにくとビスタ行きの船はこの一隻しかなかった。
      「はっはっは。困っている時はお互い様ですよ。こちらとしても、頼もしい用心棒に護衛してもらえて助かりました。この辺りは海に潜む魔物が多くて、我々だけでは心細かっただけに幸いでしたよ」
      「そういって頂けるとありがたい」
       事実この船は三度ほど魔物の奇襲を受けたのだが、その全てをなんとパパス一人で撃退せしめたのだ。
       凶暴な半魚人マーマン、強力な麻痺毒を持つしびれくらげ。そして深海に潜み、船乗りがもっとも恐れるという深海竜。そのどれもが、パパスの剣の前にあっけなく倒された。
       その活躍ぶりにより、今ではパパスはこの船ではちょっとした英雄だった。
      「しかし不思議ですな。あなたほどの戦士が、流浪の旅人とは。その剣の腕なら、ラインハットの将軍の地位くらいわけないでしょうに」
      「ははははは。私にはこの暮らしが似合ってます故」
       そういってパパスは笑った。まさか、この船長に本当のことをいうわけにもいかなかった。言ってもどうせ信じてはもらえないだろう。
       自分は将軍よりもその上の地位にいた人間などとは……
       そうこうしているうちに、船はビスタ港に到着した。
       ビスタは船が一隻停泊するのがやっとなくらいの、小さな港だった。昔はもっと規模が大きく、様々な船が往来していたのだが、ここら一帯を治めていたレヌール王家が没落してからというもの、衰退の一途を辿っている。
      「さて、名残惜しいがそろそろまいりましょうか」
       パパス、船長、そしてトーラの三人は甲板の昇降口へと向かった。
       すでに二つの桟橋がかけられ、一つ目では船員達が慌ただしく大小の荷物を下ろしている。
       そしてもう一つ目の桟橋は、どうやら乗客専用のものらしい。それを渡ってやってきたのは、一人の男性と二人の女の子だった。男の方はパパスと同い年くらいだろうか。とても身なりの良い服装で、きらびやかな装飾が彩られた豪勢な服を身にまとっている。腕や手にはめている腕輪や指輪も、庶民には決して手の届かない代物ばかりだ。
       かたら彼に付きそう女の子二人は、天使のように可愛らしい。蒼い髪の少女はどこか内気そうで、反対に黒髪の少女は勝ち気な雰囲気を漂わせている。
      「おっと、すみません。パパス殿。お先にこちらの方々を」
      「えぇ、我々は後で構いません」
      「かたじけない」
       そう言うと、船長は帽子を取って、ちょうど桟橋を上がってきた男を出迎えた。
      「これはこれはルドマン様。長旅お疲れ様でした」
      「うむ。船長。出迎えご苦労! わしの船も相変わらず手入れが行き届いているようで安心しだぞ」
      「それはもう、はい」
       船長はぺこぺことお辞儀をする。どうやら彼は雇われ船長のようだった。
      (ほう、この男が)
       パパスはルドマンと呼ばれた男に目を向けた。
      (南西の都市に一代で巨万の富を築いた大富豪がいると噂で聞いたことがあるが、まさかこの船の所有者だったとはな)
      「ぬ? こちらの方は」
       ルドマンがその時初めてパパスとトーラに気づいた。
      「お初にお目にかかります。ルドマン殿。私の名はパパスといって、無理をいって」

       と続けようとしたが、
      「えぇ、このお方はとても強い用心棒でして、この船のピンチを何度も救ってくれたのです」
       と、船長に言葉を遮られた。
      「おぉ、そうでしたか! いやぁ、かたじけない。君、礼金はちゃんと渡したのかね?」
      「え? あ、いや、それが、まだでして」
      「なんだね。だめじゃないか。このルドマンがケチだと誤解されてしまう。パパス殿といったね。これは少ないが、とっておきたまえ」
       そういって、ルドマンは自分の指から金の指輪を取ると、パパスの手に強引に押しつけた。
      「い、いや、私はそんなつもりでは」
      「はっはっは、遠慮することはない! 船を護衛してくれた正当な報酬なのだからな!」
      (やれやれ)
       むげに断って富豪のご機嫌を損ねるのもつまらないので、パパスはご厚意を受けることにした。
      「さて、船長。出港までに、どのくらい時間がかかるかな?」
      「そうですね。荷物の積み込みや、船員達の休息もありますので、早くても明日の昼くらいかと」
      「ははは、よいよい。私たちもたった今港についたばかりなのだ。今日はここの宿に泊まることにしよう。どうだね、パパス殿もご一緒に」
      「そうですね」
       パパスは空を見上げた。空はじょじょにだが茜色に染まろうとしていた。季節は冬、日が落ちるのも早い。
      (サンタローズまでは徒歩では丸一日かかるな)
       冬の野宿は自分はともかく、幼いトーラには辛いだろう。そうと決まれば、断る理由はない。
      「では、お言葉にあまえて、出立は明日にいたしましょう」
      「それがいい! 道中の武勇伝のほど、ぜひ聞かせてもらいたい!」
       そういって、ルドマンは愉快そうに笑った。

       

       

       

       続く

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