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    2017.01.09 Monday

    反竜伝記 Afterstory ACT10 未完成呪文

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      私生活多忙につき短めですが、なんとか一話アップ。

      牛歩の如き更新速度ですが、今年もよろしくお願いします。

       

       

       

       

       

      「ユ、ユーリア。意識を取り戻したのか」
       誰よりも驚いていたのはセインだった。
      「心配かけてすまなかったわね、セイン」
       そういって、ユーリアは弱々しく微笑んだ。
       これが、勇者ユーリア。
       覚醒したのを見たのは、ロムは初めてだった。
       目の前の彼女は明らかに病人だった。顔色も悪く、全身やせ細ってしまい、おそらく立っているのもやっとだろう。
       だが、その凛とした佇まいは、確かに数々の冒険を経験してきた強者のものに違いなかった。
       それに、以前から知っているような、そんな不思議な感覚を感じる。
       同じ勇者と呼ばれる存在だからだろうか。それとも……
      「話は聞いていたわ。私のせいで、ずいぶんと迷惑をかけてしまったみたいね。ごめんなさい」
      「君が悪いわけじゃない。むしろ、私の力が足りてなかったばかりに……」
      「セインはよくやったさ。だが、今回ばかりは相手が悪かった。ただでさえキラーマシンといえば、呪文の一切が通用しないやっかいな奴だ。しかも、今回の相手はどうやらその強化型らしい。生きていただけでも、よかったと思わなければな」
       そういって、エリオスは彼を慰めた。
       そんな中、改めてユーリアはロムに目を向けた。
      「あなたが、こちらの世界の勇者ね。自己紹介が遅れてごめんなさい。私はユーリア。一応、あちら側の世界では勇者と呼ばれていたわ」
      「僕はロム。もっとも、僕が勇者だったのは数年前までの話で、もう勇者としての力はないんだけどね」
      「そうなの?」
       ユーリアは首を傾げた。そのわりには、彼からは自分と同質の力を感じるのだが……
      「とにかく、改めてお礼を言わせてもらうわ。そして、アイメルさんのことも心よりお詫びします。もちろん、キラーマジンガの元には私がいきます」
      「いかん。死にに行くようなものだぞ」
       頑としてセインは反対する。
      「ゾーマの呪いは完全に解けたわけじゃないんだ」
      「けど、それ以外にアイメルさんを助ける方法はないわ」
      「私が思うに」
       それまで黙ってことのなりゆきを見守っていたリーシャが、初めて口を挟んだ。
      「あのキラーマジンガという魔物。約束を素直に守るような奴には見えなかった。どのみち、あいつは素直にアイメルを返すつもりはないだろう。むしろ、我々の目の前で彼女にとどめを刺すくらいのことはやりかねない」
      「つまり、何か策を考えなければならない、ということだな」
       エリオスの問いに、彼女も頷く。
      「奴をうまく罠にハメて、アイメルを救い出す。もちろん、キラーマジンガには落とし前をつけさせてもらう。メッキーの仇だ」
       セインの瞳には怒りの炎が燃えたぎっていた。
      「セイン……うっ」
       ふいに、ユーリアは苦しそうに胸を押さえた。
      「だ、大丈夫かい?」
       とっさにロムが駆け寄る。
      「う、うん。呪いの力が完全に抜けたわけじゃないから……」
       シャナクの呪文はユーリアの呪いを少しだけ弱めたにすぎなかった。おそらく、今のユーリアは満足に剣を振るどころか、歩くこそすら難しいだろう。
      「作戦のことは私たちが考える。セインとユーリア殿は今は身体を治すことに専念してほしい」
       エリオスはそう言って、彼女の肩に手を置いた。

       二人の看病をリーシャに任せて、ロムとエリオスは部屋を出た。
      「メッキー……」
       部屋を出るなり、ロムは壁に手をついてうなだれた。
      「僕らが彼を頼ったばかりに」
      「ロム。こればかりは、仕方がないさ。つらい言い方だが、戦いには犠牲が付き物だ」
      「けど!」
      「酷な言い方だが、私たちが出来るのは、メッキーの仇を討ってやることだけだ。この手でな」
      「……あぁ!」
       と、彼は力強く言った。
       ロムの瞳には怒気を含んだ炎が激しく揺らいでいた。こんなに怒った彼を見るのは、エリオスは初めてだった。
       もし、アイメルに万が一のことが起こったら。
       その時は、ロムは鬼神と化してしまうだろう。そうなってしまったら、もう誰も彼を止めることはできない。
      (あってはならないことだ。そんなことは)
       怒りに囚われたロムを、エリオスは見たくなかった。そのためにも、アイメルの救出は、なんとしても成功させなければならなかった。


       とはいえ、そうそう名案が浮かぶはずもなく、無情にも時間は刻々と過ぎていく。
       すでに夕刻。空はあかね色に染まり、星々が煌めき始めていた。
       ロムとエリオスは先ほどまでサロンで意見を交わし合っていたが、どれも決め手に欠けるものであった。今はもう何も浮かばず、ただただ沈黙している有様だ。
      「ちょっと、外の空気を吸ってくるよ」
       ロムはそう言って席を立った。
       このままここにいてもいいアイディアは降ってこないだろう。
       念のため剣だけを背負って、彼は宿屋を後にした。
      「……」
       行くあてもなく、思案をめぐらせながらただただ町中を歩き回る。
       帯剣した戦士が、仏頂面で闊歩する様は、さぞ異様だろう。行き交う人々は訝しげな目で彼を見ては通り過ぎていく。
      「こうなったら、約束の時間より前に思い、切って奇襲を仕掛けるか……いや、それで万が一アイメルの身に何かあったら」
       苛立ちを抑えきれずにロムは髪の毛を掻き毟る。
       その時だ。
      「お困りかのう、若いの?」
       しゃがれた老人の声がして、ロムははっとした。
       その声には、かすかに聞き覚えがあったのだ。
       後ろを振り向くと、そこには山吹色のローブに身を包んだ老人の姿があった。
       否、彼は老人ではない。歳を取ってはいるが、人間ではなかった。
       彼らの種族の正式な名称を知る者はほとんどいない。人型であり、魔道に長けていることから、人々は彼らを単純に魔法使い族と呼んでいた。
       そして、ロムには知り合いの魔法使い族はたった一人しかいない。
      「マーリン! そうか、この町にはあなたがいたか!」
      「んん? どうしてわしの名を?」
      「お忘れですか? 僕ですよ。リュカの息子のロムです」
      「おぉ、そうじゃった! リュカじゃ! いやぁ、久しぶりじゃのう。ピエールやヘンリーは元気かのう。そういえば、おまえさんの奥さんの姿が見えんようじゃが、どうしたんじゃ?」
      「マ、マーリン?」
       あまりのことに、ロムはすっかり困惑してしまった。マーリンは、あろうことは自分と父を間違えている。
      「おぉ、そうか。もうじき、赤ちゃんが産まれるんじゃったな。元気な子が産まれるといいのう」
      「マ、マーリン……」
       ロムは悲しくなった。確かに、マーリンはかなりの高齢だ。こうなっていても不思議ではなかった。だけど、自分のこともわからなくなっていたなんて。
      「まぁまぁ、立ち話もなんだ。わしの家に来るといい」
      「で、でも、今は」
      「何を遠慮することがある。わしとおまえとの仲じゃないか。ふぉっふぉっふぉ」
       そう言うなり、強引にマーリンは彼の手を引っ張って案内し出した。
       無下に断ることもできずに、仕方なくロムはなすがままに老人の後に続いた。


       町の東南の辺鄙な一角に、その家はあった。
       二階建ての、縦に長いひょろりとしたのっぽの家だった。
       そこには、確か見覚えがあった。
      「ここは……」
      「わしの親友の家じゃよ。かつては共に呪文の研究に勤しんだ仲じゃったが、三年前に先に逝ってしもうた。今はわしだけがここに住んでおるよ」
       部屋に入ると、そこはお世辞にも綺麗とはいえない、雑多な空間が広がっていた。
       洗濯物はちらかしっぱなしで、床にはごみが散乱して足の踏み場もない。壁には無数のメモ用紙が貼られており、中央に無造作に置かれた壺にはもくもくと白い煙が煙突めがけて上がっている。
      「すまんな。呪文の研究をしていると、部屋を片付ける暇もなくての」
      「あはは」
       ロムは苦笑しながら、メモの一枚に目を通した。
       ……えっ!
       ロムはとっさにメモ用紙を壁からはぎ取った。
      「こ、これは!」
      「ほほう。それに目がいくとは、さすがリュカじゃ」
       勝手にメモをはぎ取ったことには気にもとめずに、マーリンはにやりと笑みを浮かべた。
      「そいつは、今研究している失われた呪文じゃよ。唱えた者を別の姿に変えるという……擬態化呪文、モシャスじゃ」
      「す、すごい! というか、それだ! それですよ、マーリン!」
       ロムは感激のあまりマーリンの手を取った。
       モシャスの存在は、ロムも一応名前は知っていた。だが、かつてのルーラと同じく、すでに失われた呪文だったのだ。
       これを使えば、うまく敵を騙せることができるかもしれない。
      「すまんのぅ。まだこいつは研究中で、完全ではないんじゃよ」
      「完全ではないって……」
      「試してみるかね。ゆくぞ、むぅぅ、モシャス!」
       マーリンは呪文を唱えた。
       ぼんっと、どこからともなく煙が上がる。
       煙が晴れると、そこにはもう一人の自分の姿があった。
       鏡でしか見たことがないロムの顔……
      「って、顔だけ?」
      「そうなんじゃよ。今は顔と、あとはせいぜい声色を似せることが精一杯なんじゃ」
       苦笑して、マーリンは術を解く。
      「がっかりさせてすまなんだな」
      「いえ、それでもすごい呪文です。そうか、顔と声色か……」
       ロムは口元に手を添えてしばし考え込む。
       これだけで、あのキラーマジンガをうまく騙せるとは思えないが、一工夫すれば、あるいは。
      「マーリン。その呪文は、誰でも使えるものですか?」
      「まぁ、わしと同等の魔力の持ち主なら、大丈夫じゃろう。そう難しい呪文でもないのでのう。何せ未完成の呪文じゃし」
      「そうか……わかりました。ちょっとだけ待っててください」
       ロムはそういうと、マーリンを残して屋敷を後にした。
       空の晴れた広場に出ると、彼は道具袋をあさった。
       確か、この辺に……あった。
       彼が取り出したもの、それはキメラの翼だった。
       前の冒険の時に手に入れて、使わずに取っておいたものだ。
       ……まだ使えるといいが。
       一抹の不安がよぎったが、気にしてはいられない。
       彼は転移先のイメージを頭に思い浮かべながら、翼を天高くほうり投げた。
       ふっと、体が軽くなったかと思うと、彼の身体は遙か彼方の大空へと飛び上がっていた。


       続く

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